ボイストレーニングの迷宮 #1

ジャズボーカル

ボイストレーニングとは何だろう

ボイストレーニングという言葉を聞くと、
多くの人はこんなイメージを持つかもしれません。

  • 高い声を出せるようになる
  • 声量を出す
  • 良い声になる

もちろん、それもボイストレーニングの一部だと思います。
ただ、音楽の現場を見ていると、どうもそれだけではないように感じています。

私はボイストレーナーではありません。
歌の専門家でもありません。

どちらかと言えば、音楽の現場を観察している側の人間として、

ジャズの現場で歌手や演奏家と接していると、
ボイストレーニングというものの役割は、
もう少し別のところにあるように見えてきます。

それは、

「より楽に歌えるようになること」

なのではないか、ということです。


歌手は楽器奏者なのかもしれない

私は普段、管楽器を演奏しています。

その立場から歌手を見ていて感じているのは、

歌手も楽器奏者のひとりなのではないか。

ということです。

音を出している仕組みは違います。
トランペットは金属の管で、
歌は声帯です。

でも、

  • 音程
  • 音色
  • フレーズ
  • リズム

を扱うという意味では、
やっていることはかなり似ています。

楽器奏者は普段、基礎練習をします。

トランペットなら

  • ロングトーン
  • リップスラー
  • スケール

といった練習です。

曲を演奏することとは別に、
楽器そのものをコントロールする練習が存在します。

歌にも同じようなものがある。
それがボイストレーニングなのだろう、と私は想像しています。


ジャズボーカルは意外と忙しい

ジャズの歌をよく聴いていると、
歌手はかなり多くのことを同時に処理しているように見えます。

例えば、

  • コード進行
  • ハーモニー
  • リズム
  • フレージング
  • 歌詞のストーリー

そして、ときには

アドリブ

も入ってきます。

もし思い通りに声を出すこと自体が大変だったら、
これらを同時に処理するのは難しいはずです。

高い音を出すのに必死だったり、
息が足りなかったり、
音程が不安定だったりすると、

意識の多くが

「声を出すこと」

に向いてしまいます。

そうなると、

音楽そのものに集中する余裕がなくなる。

逆に言えば、
声に余裕があるときほど、
音楽に意識を向けることができる。

これは想像に難くありません。


自由に歌えるということ

ジャズを聴いていて面白いのは、
同じ曲でも毎回歌い方が違うことです。

フレーズを長く伸ばしたり、
リズムを崩したり、
ときにはメロディーそのものを変えたりもします。

つまりジャズの歌は、

その場で作られている音楽

でもあります。

そう考えると、

声が自由に動くこと

はかなり重要なのではないかと思えてきます。

「こう歌いたい」と思ったときに、
声が自然についてくる。

これは楽器奏者にとっても理想の状態です。


他のジャンルとの違い

ここで少し、他のジャンルについても考えてみます。

ポップスなどでは、

原曲にどこまで近づけるか

というテーマが大きくなるケースもありそうです。

  • 原曲キーで歌う
  • メロディーを正確に再現する
  • オリジナル歌手に近い声質を目指す

これはある意味で、

再現の芸術

と言えるかもしれません。

一方、ジャズでは

同じ曲でも
同じ歌手でも
毎回違う歌い方をするのが普通です。

そういう意味ではジャズは、

再現よりも生成に近い音楽

なのかもしれません。

だからこそ、

声の自由度

が大切になるのではないかと感じています。


ボイストレーニングは何のためにあるのか

ここまで考えると、
ジャズにおけるボイストレーニングの役割は、

声という楽器を扱いやすくすること

そして

音楽そのものに集中できる状態を作ること

なのではないか、という考えにたどりつきます。


この連載で考えてみたいこと

このシリーズでは、

  • ジャズボーカルに必要な身体能力
  • ボイストレーニングの種類
  • 発声という仕組み
  • 練習の考え方

などについて、
一つずつ整理してみたいと思います。

世の中にはボイトレの情報がたくさんあります。

ただ、それらが必ずしも

ジャズという音楽を前提に整理されている

とは限りません。

この連載は、
専門家の解説というより、

音楽の現場を見ながら考えたことを
少しずつ言葉にしていく試み

になると思います。

そして最後には、

自分の声を客観的に知ること

というテーマにもつながっていくはずです。

声は、自分では意外と分かりにくい楽器です。

だからこそ、

測ること

にも意味が出てきます。

その話は、また後の回で。


次回予告

「ジャズボーカルにボイトレは本当に必要なのか?」

というテーマについて考えてみたいと思います。

もし現場で指導されている方で、
「そうそう!」と感じる部分や、
「ここは違う視点がある」と思われる点があれば、
ぜひ教えていただけると嬉しいです。

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